2021年のオーディオを総括するにあたって出来事を書き出してみた。
1月にJICOからV15 Type-Ⅲ用のスタイラス、黒柿と牛殺を入手、これでベイシーモデル(V35MRB)と合わせて3種のスタイラスを揃えることができた。
僕の愛読書である月刊Stereo誌の人気ライターのT氏、そしてStereo誌の編集長のY氏はいずれも牛殺を絶賛しているが、僕の感想はちょっと違った。聴く音楽のジャンルにも拠るのだが、優劣というよりは性格の違いがあるという表現の方が良いかもしれない。僕なりにまとめてみると;
①ベイシーモデル:音の輪郭の鋭さ、艶やかさが際立つ。音像の立体感というか彫の深さを感じさせる。ジャズが最高。
②黒柿:繊細で奥床しい。自然素材の良さを感じさせるしっとりとした美音。クラシックはこれかな。
③牛殺:少々粗野なところはあるがそれが線の太さに繋がっている。ロックはこれ。
ちなみにこれらの印象はV15 Type-Ⅲでの話。これがM44-7やM44Gとなるとまた少し話は変わってくる。
この続編として5月末に古めかしいが程度の良いM44-7カートリッジ本体を入手、千葉房総のSilverheartのL.angleという新しい発想のシェルとの組み合わせができたところで今度はM44シリーズとJICOスタイラス群の新たな展開があった。
元々これら一連の話の起点はM44GとSilverheartの黒檀シェル、そしてJICOの黒柿というところにあるのだが、そこにM44-7というエネルギッシュなカートリッジが加わり、そして牛殺が加わり、とどめにはL.angleがということで無限の広がりを持ち始めているのだ。
アナログの面白さここに極まれりというところだろう。ちょっと引っ掛かるのはMCカートリッジや昇圧トランスなどがこうした話題に入ってこれないところなのだが。
もう一つのエピソードはTEACのV-8030Sに関わるものだ。
ヤフオクで手に入れてから十数年が経つV-8030Sなのだがこれが定期的というか周期的に壊れる。30年も前の機械で金属、樹脂、ゴムが複雑に絡みあうメカニズムなのだから壊れないわけがない。壊れるところも壊れる原因も大体決まってはいるのだが、それでもDIYで直すには相当ハードルの高いのがカセットデッキなのである。
今回でたしか四回目だと思うのだが、その都度TEACのサービスセンターに修理に出している。30年も経った機械の修理を請け負ってくれるTEACはメーカーの鑑だ。しかしながら修理用の純正部品も底を尽いてきた昨今、抜本的な修理は困難になりつつある。あと何年使えるのか、次なる故障は直せるのか・・・全ては神頼みだ。
此処のところ大きな利益を上げているSONYあたりが(SONYしかないか)損得抜きでカセットデッキの復活を行えば称賛ものなのだが。スペックにも拠るが30万円ぐらい出しても欲しい物好きが数千人いやもう少しはいると思うのだがどうだろう・・・。
いずれにしても2カ月の入院から帰ってきたV-8030Sを励ましながら使う今日この頃である。
音源はレコード、そして希少なメタルテープ、使うカートリッジはシュアーのMMカートリッジにJICOのスタイラスと持てる力を全て出し切っての録音再生だ。
とここまではアナログ中心の話、ではデジタルはどうなっているのかというと。
使いこなしの難しさから挑んでは敗退を繰り返してきたヴォイシングイコライザーDG-48に再挑戦。まるで難攻不落の未踏峰に挑み続けるクライマーのような心境である。
途中何回か遭難しかけるがついにDG-48を征服・・・と言いたいところだが頂上は極めたものの初級ルートからというのが率直なところ。北壁直登のようなバリエーションルート、そして冬季単独、無酸素などの難関に値するイコライジングには程遠い。まだまだ課題は残るというところだろうか、挑戦は続く・・・かな。
更に休眠中のDAC、Oppo Sonica DACを復活させた。
これにはいくつかのきっかけがあるのだが、デジタルオーディオのインフラの一つであるWifiルーターの刷新によって一時期迷子状態だったOppo Sonica DACのネットワークプレイヤー機能が復活したことが大きい。
超高級機にも使われている高性能DACチップの採用でエッジ鋭い音を放つOppo Sonica DACなのだが、そこにラックスマンの真空管ハーモナイザーを組み合わせることでキレの良さにコクのある音を作り出そうというのが狙いだ。こういうところがデジタル+アナログの面白さともいえよう。で、狙いに近い音が出てきたからニンマリ。
これには真空管ハーモナイザーにブラックウォールナットのケースを被せ、脚にも凝ったことが効いていると思い込んでいる。
そしてデジタルオーディオの極めつけがクロックジェネレーターの導入だ。それもGPSからの信号にシンクロさせて基準周波数信号を発信させるタイプのものをかつての同僚に作ってもらった。
CDプレーヤーのK-05にはうまく10MHzの基準信号を取り込めたのだが、Mytek DigitalのBrooklyn DAC+の方はうまくいかない・・・現在改良中である。でも、こういうのを手作りしちゃうのって尊敬しちゃうなぁ。
といったところが2021年のオーディオ道の事件簿である。いやいや、次々と色んなことにチャレンジするなぁと我ながら感心。
やっぱりオーディオの神髄、奥義は「見る前に跳べ」なのである。