GPSクロックジェネレーター

デジタルオーディオ機器の性能向上には高精度のクロックジェネレーターが効くとは周知の事実である。そのメカニズムと効能について此処では詳細に語るつもりはないが、オーディオ好きなら誰でも試してみたい事の一つだろう。

クロックジェネレーター、またはマスタークロックの方式の多くはルビジウム(Rb)などの高精度な発振器を用いて、ある一定の周波数(10MHz)の基準信号を発生させる。そしてその信号をデジタル機器に送り込むことによって「揺らぎ」を最小化することで音質向上を計るというものである。しかしながら、この方式のクロックジェネレーターは非常に高価だ。

で、もう一つの方式が人工衛星に搭載されている原子時計(セシウムとルビジウムの原子時計で、これらの原子時計の誤差は30万年に1秒以下と言われている)の信号を受信して基準信号を生成するというものだ。これを活用しているのがGPSだ。
なのでGPSの受信機があればクロックジェネレーターができる・・・随分乱暴な説明だが・・・のである。
GPSクロックジェネレーターはかなり前から商品化されているが今一つ勢いが感じられない、昨今の高級クロックジェネレーターはルビジウム発振器方式が主流なのである。
ここまでが今回のお話の前段である。

ある日オーディオ好きだが電気には弱い企画屋と、オーディオには興味は無いが電気にはめっぽう強い技術屋が酒を飲みながらGPS方式のクロックジェネレーターについて語り合った。
電気に強い技術屋にとっては、そもそもそんな些細な性能向上に心血を注ぐオーディオフリークの気持ちは全く理解できないのだが、自分の技術を以ってすればそんなものは簡単にできそうだという事を述べた。「なら作ってくれ。俺が試してうまく行ったら商品化して大儲けしようぜ。」という事になったのである。

それから長い時間が経った。
企画屋は既に会社を去り、毎日が日曜日の気ままな暮らし。技術屋は企画屋のせいで始めた変なプロジェクトの尻拭いで2年ほど苦労させられたが、やっとのことでこの夏にサラリーマンを卒業した。
ある日、技術屋から企画屋にメールが送られる。「例の物できました、お送りしましょうか。」
ビックリした企画屋は秘蔵の森伊蔵の一升瓶を持って技術屋の家に。そこで森伊蔵と物々交換したのがこれだ。

ついに完成したGPSクロックジェネレーター

びっくりするほど良くできてる。
GPSアンテナを窓際に置き、CDプレーヤーとBNCケーブルで接続。そして電源を入れる。

南向きの窓に置かれたGPSアンテナ
スイッチオン!

内蔵されたクオーツとGPS信号のランプが激しく点滅する。
暫くすると二つの赤いランプの点滅タイミングが同期を始める、そして「GPS LOCK」の緑のランプが点灯。これで内部クロックはGPSと同等の精度を持つマスタークロックとなったのだ。

GPS LOCK点灯!

今この瞬間、このクロックジェネレーターからは限りなく10MHzに近い高精度の信号がほとばしり出ているのである。
この信号をCDプレーヤーのK-05に取り込んでやる。

おお、「10MHz in」だ!

続いて我が家のエースDACのBrooklyn DAC+にも・・・あれ~シンクロできない(涙)。

こちらは「NO LOCK」(涙)

Brooklyn DAC+についてはゆっくりと対策を練ろうではないか。

さて、GPSクロックジェネレーターにシンクロしたK-05はどんな変貌を遂げるのであろうか、乞うご期待。

<2021/12/25追記>
GPSクロックジェネレーターを含めた機器のレイアウトを見直した。GPSアンテナは西側の窓に移設したが問題なく受信をしている。

GPSクロックジェネレーターを加えた新レイアウト