JICOに注文していた「黒柿」スタイラスが届いた。
「黒柿」をもう少し説明すると、兵庫県の日本海側の豊岡(城崎温泉のある町らしい)にあるJICOという会社が作る換え針の一つである。通常であれば金属で作るカンチレバーという部位に黒柿という柿の木の中に稀にできる成分を使っている。
換え針を作って50年というベテラン職人の森田さんという方が考案され、そして自ら作製されている一品、いや逸品だ。
森田さんが黒柿という材質をカンチレバーに選んだ理由は色々とあるのだろうが、僕的には「木にこだわるM44G」を完成させる格好の針である。
早速2号機に付けてみる、と言いたいところだが黒柿スタイラス単独の効果を知りたいのでまずはシュアーのオリジナルに近い構成の1号機に付けて聴いてみる。レコードは聴きなれた「Waltz for Debby」だ。
M44Gのオリジナル(≒1号機)が持つ明るい性格、迫力、躍動感が損なわれずに落ち着きというか品格が加わる感じだ。
で2号機に黒柿を装着してみる。針圧は1gで聴いてみる。
凄い!
もともと2号機(+シュアーの針)が持っていた上質感が更に磨かれた感じだ。うるささを全く感じさせないスムースさの中に芯がある。
あまり興味のない家人に1号機+シュアーオリジナル針(1)、1号機+黒柿(1a)、2号機+黒柿(2)、2号機+シュアーオリジナル針(2a)を聴き比べてもらうとこういう順位だった。
(良い)2 > 1a > 2a > 1
これは僕の中の順位と一致。というか音楽を好きな人が聴けば十中八九こうなると思う。
上記の結果を分析すると黒檀のハウジング+ヘッドシェルの効果よりも黒柿スタイラスの方の効果が大きいという事になる。黒柿スタイラス最高!
その次はデジタル音源との勝負だ。選んだのはグレン・グールドが弾くバッハのゴールドベルグ変奏曲。デジタル音源はこれが最良と思われるSACDと最近プレスされた高音質なLP。
レコードの進行に合わせてSACDを鳴らして聴き比べる。これにも家人の参加を得た。
これはアナログにとっての苦難の比較かと思われた。何故ならSACD音源は圧倒的にSN比が高いしダイナミックレンジも大きいから。でも、切り替えながら聴けば誰の耳にもレコードには豊かな響きと温かみが感じられる。デジタル音源の中ではもっともアナログに近いといわれるSACDでさえこの点においては敵わない。「SACD(のピアノの音)はプラスチックでできている、レコード(のピアノの音)は木でできている」というのが家人の感想だった。ということでM44G(+黒檀+黒柿)の勝利と言って良いだろう。
M44G+黒檀ハウジング+黒檀シェル+黒柿は最強だった。