PP-300に回帰してみた

最近になってM44Gから始まってM97xE、V15 Type-4、V15 Type-3、M44-7とSHUREの主たるカートリッジを入手(ほとんどが中古品だが)、それらに併せてJICOの交換針、山本音響工芸のヘッドシェル、Audio Technicaのリード線などを組み合わせ、変わったところではシルバーハートの黒檀ハウジングや魂柱など、MMカートリッジとそのチューニングで遊び尽くしてきた。
結果的にMMカートリッジに持っていたチープでローファイなイメージは払拭され、躍動感や温かみのある音色など MMカートリッジならではの特徴や良さを強く印象付けられた。

その間の数か月、昇圧トランスを含む配線をし直すことが億劫でMCカートリッジは高出力モノラルのDL-102を除いてお蔵入り状態だった。
4年前にSL1200-GAEを購入しアナログに復帰した時はMCカートリッジを選んだ。長いブランクもあったので間違いのないものということでまずはMCカートリッジを選び、そしていくつかのMCカートリッジを聴き比べた結果、かなり高級なPhasemationのPP-300を選定した。価格的には前述したSHUREのMMカートリッジの全部を足したものより高価なカートリッジだ。ヘッドシェルもリード線も高級品。
当たり前だが最初からPP-300は素晴らしい音がした。だが、比較になるものが無いので「孤高の人」でしかない。その後、DL-103RやSHUREのMMカートリッジ群を揃えていくことで比較の対象は増えていったのだが何故かPP-300との直接対決的な聴き比べはしてこなかった、というか避けてきたような気がする。
今回のSHURE一族のカートリッジを相当長い時間、様々なレコードで聴き込んできたので、ある程度頭の中にその音像が記録というか記憶されている。また、MMカートリッジの最高峰といわれるV15 Type-3の音も知ることができたので、比較のベースラインはできたのではないか、月日が経ってその記憶が風化する前にPP-300との比較をしてみようと思い立ったのである。
いつものような顔ぶれのレコードでPP-300を聴いてみた。

その時々の印象を表すセンテンスを書き記すと;
大変スムース奥ゆかしい音大人の音
聴き疲れしない音
広いFレンジ(高音も低音も伸び切っている)
広いDレンジ(破綻しない)
音の分離の良さ(ダマにならない)
前後の奥行き感(立体的)
汗を掻くような迫力はないがしっかりとしたタッチとアタック

Phasemation PP-300

高貴な、高級なものに通ずる質感 、こういうのが正にハイファイということなのだろうと思う。言い方を変えると万人が良いと感じるものだとも言える。
ただ『当たり』が軽過ぎると言えなくもない、まるで吟醸酒のように透き通った雑味の無い音とも言える。吟醸酒が好きな人もいれば本醸造酒が好きな人もいるという事だ。そういう意味では僕のカートリッジ群の中ではV15 Type-3と双璧をなす存在だ。PP-300が現代的な技術の粋を集めたものであるのに対し、Type-3は30年近く前の技術で出来ているのに引けを取らないのが凄い。
文末にM44Gとの比較を示すが総合点が「-10」というのは、ある意味M44Gの対局にある性格ということだ。かといって、M44Gが劣るのかというとそうではない。M44Gは個性的で魅力的なカートリッジであると僕は思う。
そこがオーディオの面白い一面でもある。

<PP-300>(-10)(M44Gとの比較)
ヘッドシェル:Phasemation CS-1000
リードワイヤ:失念(したが高級品)

写実的(-1) 〇〇●〇〇 叙情的
繊細(-2) 〇●〇〇〇 図太い
COOL(-2) 〇〇●〇〇 WARM
DRY(-1)〇〇●〇〇 WET
落ち着きがある(-2) 〇●〇〇〇 元気がある
シャープ(-1) 〇〇●〇〇 ふくよか
高域重視(-1) 〇〇〇●〇 低域重視