オーディオ誌だったかネットだったかは忘れたが、件の「黒柿」シリーズの生産が近日中にいったん打ち切られるという情報を得た。カンチレバーの材料となる黒柿の入手の問題らしい。
知る人ぞ知るJICOの「黒柿」シリーズ、僕はM44G用のものを持っていて、それをベースにM44G「Woody」なるものをでっち上げたのだがそれがなかなか良いのだ。
で、「黒柿」にはシュアーのMMカートリッジの代表格であるV15 Type-3(III)用のものもあるので何時かはと思っていた矢先の生産打ち切り。年末に慌てて注文した。とはいっても非常にリーゾナブルな価格である。
年を越して送られてきた「黒柿」を加え、V15 Type-3用に3種のスタイラスが揃った。
左から「黒柿」、「ベイシーモデル」、「牛殺」、これらはいずれもJICO製の互換針であってシュアー純正のVN35は所有していない。なのでV15 Type-3オリジナルの音は知らないのだ・・・。
M44Gから始まった僕とシュアーのMMカートリッジ群との出会いは長い話だし、以前にも述べてきたので此処では省略するが世間でも言われるようにその頂点に位置するのはV15 Type-3であろう。有名な一関のジャズ喫茶「B」はV15 Type-3しか使わぬという。
ただそのスタイラス(針)は消耗品なので、カートリッジのコンディションを最高に保つには新品スタイラスを入手し続けなければならず、「B」のマスターのSさんもそれに苦心されているようだ。で、究極の打開策として生まれたのがJICOの「ベイシーモデル」だ。SさんとJICOの共作、これでSさんも新品スタイラス探しの旅に終止符を打つことができたのであろう。(「ベイシーモデル」は500個限定だがSさん用にはその外数で相当な数のものが作られたに違いない。)
というような経緯を経て、昨年の春に限定販売された「ベイシーモデル」、そして夏ごろに追加された「牛殺」、そして以前からある「黒柿」が揃ったので僕なりのV15 Type-3用スタイラスのコレクションは完成としたい。
写真でもわかるようにカンチレバーの材質によって色が異なる。「黒柿」は当然黒で「ベイシーモデル」はアルミなので銀色、そして「牛殺」は柘植のようなあかるい茶色だ。
針圧を1gで固定していつものように「Waltz for Debby」、「ベートーヴェン・ピアノソナタ30番/32番」などの愛聴盤で聴き比べ。今回はスコット・ハミルトンも加えてみた。
「黒柿」も「牛殺」もまだまだエージング不足なのでダンパーも硬く、針の動きが本来あるべきものよりは多少ぎごちないとは思うのだが印象を。主として「Waltz for Debby」で。
ベイシーモデル:張り、艶、躍動感がある。ステージいっぱいに音が広がる。
牛殺: ベイシーモデルに比べると楽器がひと回り小さく隙間ができる。音が全般的に硬い。スコット・ラファロが少し不機嫌ぽい。
黒柿: 奥ゆかしいく端正。音量が小さい。ピアノはよく歌う。
やっぱりシュアーのMMカートリッジは面白い。