半世紀ぶりの感動

石森延男著の「コタンの口笛」の第二部「光の歌」を読んだ。

コタンの口笛

今を遡ること凡そ半世紀、鎌倉駅の西口(地元民は「裏駅」と呼んでいた)から徒歩15分ほどのところに「あすなろ文庫」という個人宅の一部を図書館として開放しているところがあった。
今はもう存在しないようだが、小さなトンネルを通った向こうにある洋館だった。地番でいえば佐助か扇が谷だっただろう。

小学生だった僕がそこで出会った本の一つがこの「コタンの口笛」だっった、上下巻の大作だ。あすなろ文庫には日曜日しか行けないので何週間か掛けて読み終えたのだと思う。アイヌ民族への差別や迫害、そしてその中で逞しく成長していく中学生の姉と弟の葛藤を描いた物語が小学生の僕に与えた影響は大きかった。それまで同じ日本人の中でそうした問題があることを知らずにいたことを恥じたことが思い出される。

先日、ふとしたことがきっかけでこの本を購入した。電子書籍で探したがKindleにはなかったので紙の本を購入した。しかも中古品だ。
贈られてきた「コタンの口笛」はきっと昭和の時代に印刷されたものなのだろう、よく言えば風格を感じさせる角川文庫だった。問題はその文字の小ささ・・・ここで活躍したのがハズキルーペだった。眼鏡の上にハズキルーペを掛けると細かな文字が大きく拡大されて快適に読める。
本当なら第一部の「あらしの歌」から読むべきなのだが、何故か手元にあったのは第二部の「光の歌」だった。きっと第一部の内容の重さを知っていたので第二部だけを買い求めたのかもしれない。とはいえ、第二部だけで400頁を超える長編だ。

ハズキルーペの力を借りて二日で読み終えた。半世紀ぶりの「コタンの口笛」はまた新たな感動を与えてくれた。