気が付くと・・・

気が付くとオーディオシステムが増殖していた。

メインのシステムは二階のリビングルームにあるもの。これはマッキントッシュのセパレートアンプとJBLのスタジオモニターを軸にした正統派システム。これを仮に「A」と呼ぼう。
音の入り口もCDプレーヤー、ネットワークプレーヤー、複数のDACを介したPCオーディオ、インターネットラジオ、TV音声などのデジタルソースに加えて、レコード再生ターンテーブルとカセットデッキとアナログソースにも対応していて音源は多彩である。
このシステムの狙いを一言でいえば「リアリティの追求」ということになるだろうか。ジャズのピアノトリオが、クラシックの室内楽やオーケストラが、そして映画の迫力シーンがあたかもそこで演じられるように表現される。

最近のメインシステム・・・「A」

サブシステムは同じリビングルームにありながらも、フォステックスの小径バックロードホーンを核に駆動系はラックスマンの真空管アンプと真空管ハーモナイザーのキットに手を加えたもので鳴らしている。これは仮に「B」と呼ぶ。
音源はDACからのPCオーディオ、ネットワークプレーヤー、CDプレーヤーというデジタル系が主だが、その気になればメインのシステムの信号を拾って再生することもできる。
このシステムを構築した当初の狙いは「コストパフォーマンスの良さ」だとか「手軽でエコな音楽再生」という軽いノリだったのだが、造り込んでいくうちにその潜在能力の高さに気付き、小径バックロードホーンと真空管ハイブリッドの小出力アンプが作り出すユニークな音に魅せられてきた。その結果、「山椒は小粒でピリリと辛い」というか、「思わず聴き入ってしまう芯のある音」みたいなものが当面の目標となっている。

サブシステムのバックロードホーン・・・「B」
サブシステムの音源と駆動系機器・・・「B」

一階の書斎のシステムも大きくは3系統がある。

その一つはPCからFireWire接続で取り出したデジタル信号をオーディオキャプチャー、まあDACと言ってしまえばそうなんだけど、でアナログ信号に変換してSRS-Z1というイニシエの銘スピーカーで鳴らすもの(これもアンプには手を入れている。)これを仮に「C」としよう。

SRS-Z1を改造したPC用システム・・・「C」

もう一つはラズパイをDACとしてそこから先はSRS-Z1に繋がるもの。これは仮に「D」とする。

ラズベリーパイベースのDAC・・・「D」

そして三つ目はPCとUSB接続したクリプトンのDAC/アンプ内蔵スピーカーである。これは仮に「E」としておく。

DAC/アンプ内蔵のKS1-HQM・・・「E」

と、なんと「A」から「E」までの5系統ものシステムができていた。

「A」を構築する時に決めたことは「一つの機能は一つのハードだけ」という原則で、アンプもスピーカーも、そして各種音源機器も例外なくそれぞれ一つだけという決め事である。こうした決め事を設けずに部屋の中がオーディオ機器だらけという御仁を山ほど見てきているので、これだけは守ることにしてきた。ただし、レコードのカートリッジについては同じ機能でも「味」の違いを楽しむ事が自体も目的となるので例外的に一つの機能に複数のハードを認めている。

そうした「A」の厳格なルール逃れに最近追加した「B」ではあるが、安価(「A」とは二桁違うコスト)なハードの実力を舐めていた。実に奥が深いのである。
「A」とは違ってハードそのものを弄る楽しみが「B」にはある。真空管の差し替えに始まり、(僕にはできないのだが)回路の中の素子(主としてコンデンサー)の交換だったり、バックロードホーンの吸音材の量やインシュレーターなど手を入れることができるところが沢山あるのが楽しい。「A」と違って手軽にハードウェアの試行錯誤ができるのが良い。
昨今はこれにかなり凝っているというのが実情だ。

書斎の「C」「D」「E」にはそれぞれの役割分担のようなものが暗黙のうちに存在している。
いずれもデスクトップPCが音源となっているのだが、「C」は主としてYouTubeやPrime Videoのような動画再生用に。
「D」と「E」はNASに貯えられたデジタル音源の再生で、クオリティー的には「E」>「D」>「C」という序列になる。
「E」はタイに駐在時のメインのオーディオシステムとして活躍していたものだったのだが、帰国後に「A」にのめり込んでいく過程で完全にお蔵入り状態になっていたものを3年ほど前にサルベージしたものである。鳴らしてみると「E」の実力の高さに驚いた。今では書斎のピュアオーディオの主役である。

色々な尺度があるので一概には言えないのだが、この5つのシステムの総合力を並べるとすればこうなるはずだ。
「A」>>>「B」「E」>>「D」>「C」
「B」と「E」が実力伯仲しているのが面白い。心情的には自分で手を入れている「B」に勝ってほしいのだが、冷静に判断すると甲乙つけがたい、というか性格の違いもあって同格となるのだった。

時系列的に考える。
この家ができて10年が経つが、最初の5年間は「A」の構築に全力投球だった。なにせその時期には「B」から「E」はオーディオシステムとして存在していなかったのだから。
一階の娘の部屋を書斎として使い始めたのが約5年前。
まずはその少し前に導入したデスクトップPCのPAとして「C」が構築された。そして書斎のシステムにももう少し高音質をということを考え始めて「C」にサブウーハーを追加し、ラズベリーパイに興味を持ったのを機に「D」ができ、更に高音質にということで「E」が追加された次第だ。
そんな途中で「C」のアンプ部が不調になったのを電気屋のF君が直してくれた・・・だけでなく魔改造。その音の差にビックリ、ついでに本棚に死蔵されていた月刊Stereo誌の増刊号のスピーカーやアンプ作りに火が付いた。「C」のアンプにはラックスマンのキットを改造したLAX-OT1改が追加で登場した。そしてその延長で「B」のアンプLXV-OT7も魔改造中なのである。

もうこれ以上は増殖させないぞと誓いたいところなのだが、つい先日ふとしたはずみで聴いてみたゼンハイザーのヘッドホンHD-540、これは四半世紀前の欧州駐在時代に購入したものなのだが、その後配線切れを起こして長らく放置されていたものがなんとか修理され、痛々しい姿で録音時のモニターとして時おり使われていたもの。
それを何の気なしにネットワークプレーヤーに繋いでみたら素晴らしい音!なんだこれは!!ということで、これも「F」として仲間入りだ・・・だめだこりゃ。

修理跡が痛々しいゼンハイザー HD-540・・・「F」

清貧オーディオの道はまだまだ続く・・・