秋月電子スピーカー その⑦

秋月電子スピーカーの付いたバッフル板とFE83NV付きを交換しながら(これが結構大変)聴き比べをしている。

マイスターに加工してもらったケーブルを繋いで鳴らした秋月電子スピーカーの音を聴いた時にはびっくりした。これが片チャンネル300円とは・・・という音だ。一日エージングをさせたお陰で、迫力のある低音はそのままに不足気味だった高音も出てくるようになった。
聴き比べにはジャズ、クラシック、Jポップ、ボーカルなどの14曲を使ってNASからラズパイDACで再生させているのだが、性格的には中低音の厚みがある暖色系のしっかりとした音調のユニットだ。高域の繊細さは少し足りないかもしれないが、とても破格の低価格スピーカーの音とは思えない。

ところがここでFE83NVに戻してびっくり・・・なんとFE83NVも随分と良い音がするのである。不足気味に感じていた低音もしっかりと出ているし、中音域以上はもともとFE83NVの方がきめ細やかなので印象がかなり変わった。
FE83NVに変貌をもたらした要因をいくつか考えてみると:
①バッフル板を二重構造にしたことでエンクロージャーの剛性が上がり(特にユニットの支持剛性)音が良くなった。
②比較試聴なのでいつもより大きめの音で聴いているので、この音量ではFE83NVもかなり低音が出るスピーカーだったことを知らなかった。
③YouTubeの宮甚商店のフォステックスは数十年前のFE87との比較だが、FE87に比べると最新のFE83NVの方が相当に音が良くなっている。
④スピーカー内部の吸音材の有無。(今回は全くなしの状態)
ということかもしれない。③はYouTubeでの秋月電子スピーカーとの比較試聴との相違点なので、僕のシステムのFE83NVの音質向上とは関係がない。感覚的には①が一番効いているようだ。

秋月電子スピーカーとFE83NVの比較試聴に話を戻す。
この二つのスピーカーユニットは約20倍の価格差があるのだが、それに見合った差があるかといえば、少なくとも感覚的な面で僕に分かるものはない。
音色の違いはちろんあるのだが、環境が与える影響が大きいので一概にどちらが優れているかという判断は容易ではない。聴く曲のジャンル、音源の種類や再生方式、駆動するアンプの音調、再生音量、部屋の残響特性などなどの環境要素を考え出したらきりがないからだ。それに加えて個人の嗜好はバラバラなので『どっちが良いか』を論ずるのはナンセンスだということだ。
しかしながら、やはり300円のユニットがここまで互角の勝負をする、というか僕がこういう記述をするに至ったという事実は驚愕以外の何物でもない。

ということで、結論的には優劣を決めてどちらか片方を選択するというのではなく、秋月電子ユニットとフォステックスユニットをバッフル板ごと交換するシステムとして、その時の気分で今後も併用していくことにした。
取り敢えずは後に視聴したFE83NVをセットして、いま一度各部を締め上げた。ステンレス色と黒色のタッピングスクリュー両方を試してみたが、前者の方が存在感があっていい。手塗りのバッフル板の光沢がスピーカー全体の存在感をグッと向上させた。

FE83NVの場合
秋月電子の場合

今回の一連の作業というかスピーカーの改造を通じて感じたことがある。
それは新システムを構築したことがきっかけでクリプトンKS-1HQMの良さを再認識したように、YouTubeで偶然見かけた秋月電子のスピーカーユニットに興味を持ち、新システムのスピーカーを改造して鳴らしたことがフォステックスのユニットのポテンシャルの高さを見出すことに繋がったという類似した事象である。
振り返って分析をしてみればそれぞれの事象には物理的に説明のいく理由があるとは思うのだが、その理由はあくまでも結果として判ることで、もとは思いもつかない偶然の積み重ねがもたらしたものなのである。
ふとした瞬間に芽生える強い興味や天啓とも思える閃き、そしてそれに衝き動かされた時のパッションやエネルギーがある限り、これからもこうした偶然に出会うチャンスは来るだろう。それを期待するのであれば、オーディオに限らず多種多様な事に対する好奇心をこれからも持ち続けたいということである。

ちなみに今回の新スピーカーユニット導入とFE83NVの音質改善に繋がる改造などに掛かった費用は総額で4,123円。
「さとうきび畑」を聴いて思わず涙が落ちそうになる音を奏でるのに掛かった費用対効果は計り知れない。まさにプライスレス。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です