ふと思いついてサブシステムのFE83NVのバックロードホーンをメインシステムのMcIntoshのセパレートアンプに繋いで鳴らしてみた。何故今までこれを試してみようという気にならなかったのが不思議だ。
サブシステムもメインシステムもスピーカーケーブルの端末はバナナプラグなのでこういう時の繋ぎ換えは容易だ。メインシステムはスピーカー側の端子がバイワイヤリング対応で四つだが、アンプ側の端子はプラスマイナスの二つなのでバックロードホーン用のスピーカーケーブルを使えば接続には何の手間も加工も要らない。
階下のサブシステムからバックロードホーンを外し、スピーカーケーブルとともに二階のリビングルームに持ってきた。
ケーブルの長さ、そして機器のレイアウトの制約でスピーカーを置けるところはラックの上面のガラスボードの上で左右の間隔は50cmほどしか取れないがまあいいだろう。ガラスボードとスピーカーの間には薄いゴムシートを挟んだ。
ケーブルを結線してさっそく鳴らしてみる。まずはAmazon Music UnlimitedをDAC経由で再生。
あれ〜、思ったほどの感動をするような音ではないなぁ。サブシステムのLXA-OT1改と大差ない印象だ。
メインシステムのJBL-4338に比べると能率が低く、アンプのボリュームは3dBほど高いポジションで普段の音量になる。これはちょっと意外だったが、中高音がホーンの4338の能率が高いということだろう。
McIntoshがLXA-OT1を上回るのは音場の広さだ。狭い間隔で設置するしかなかったスピーカーの遥か外側まで音場が広がっている。まるで4338が鳴っているような錯覚を起こす。
とか言っているうちに音に変化が起こり始めた。
少し大きめの音量で鳴らすと今まで聴いたことがないような音が出始めた。音量だけでなく音質が繋ぎ換え直後とは明らかに違う。8cm径のスピーカーが奏でているとは思えない。38cmウーファーの4338の低音とは比べるまでもないが、それを除けば4338に見劣りじゃなくて聴き劣りしないような音を出している。
音の特徴としては、芯があるが角はまろやか。余韻が豊かで前述のように音場が広いので部屋いっぱいに音が満ちている。よく聞く表現を使うのは嫌なのだが、まさに『こんなに小さなスピーカーユニットが奏でているとは思えない』音である。
その後、CDプレイヤー、アナログレコードも鳴らしてみた、なかなか良いではないか。極論すると4338が何かの問題に襲われたときに立派に代打を務めることができるレベル。
もう一つ気になるのは同じ部屋に鎮座するKS-1HQMとの勝負だ。スピーカーユニット径だけならKS-1HQMはさらに小径だが、内蔵のDACとアンプから出てくる音は美音である。人で例えるなら小柄な美人というところだろうか。
Radikoを音源にして比較試聴をしてみると意外な結果を得た。
FE83NVのバックロードホーンがどちらかというと原音再生型の爽やかな音であるのに対してKS-1HQMは中低音のボリュームを感じるグラマラスな音だった。セッティングの違いはあるが音場の広がりと音像の確かさはバックロードホーンの方が上である。
総括すると、メインシステムと同じ部屋にあるのはちょっと個性的な音のKS-1HQMが適役で、階下の書斎(兼寝室)で独立しているサブシステムにはFE83NVのバックロードホーンが相応しいという結論を得たということにしておこう。
今回の聴き比べは小径のFE83NVのバックロードホーンと15インチウーファーのJBL4338の比較というよりはLXA-OT1改とMcIntoshのセパレートアンプの聴き比べという意味合いの方が濃かったわけだが、小出力のLXA-OT1改がかなりいい線いってるということを確認できたのは喜ばしい。
このレイアウト唯一の欠点であるスピーカーがテレビ画面を隠すという事実の解はないこと、そして『一つの機能には一つの機器』という自分なりの原則に則って、夕刻にバックロードホーンは元の部屋に戻っていった。