マイカーの軌跡 ④

(西遊記)オペルオメガ、オメガワゴン、ビッグホーン、オメガワゴン、フロンテラ、ミニ、アストラ

とても気に入っていたベクトラとの蜜月は長く続かなかった。
1993年5月、欧州への転勤を命じられたのである。数年に渡る駐在であることは最初からわかっていたのでベクトラは泣く泣く姉に譲り渡した。

ドイツに着任した当初に乗っていたのはちょっと古いいすゞのビッグホーンだった。カンパニーカーとして注文したオペルオメガが来るまでの繋ぎとして乗っていたのだが、この車は北米のシボレー向けのピックアップトラックをベースに作られたSUV。よって速度無制限のアウトバーンには向いていない。先行する乗用車のブレーキング(ドイツ人は制限速度が低く切り替わる標識を見るとブレーキを踏んで減速するのだ)で心臓がバクバクするほど恐い目にあったりした。

しばらくして僕用のカンパニーカーが届けられた。オペルのオメガである。日本で乗っていたベクトラのひとつ上のEセグメントプラットフォームの車だ。

オペル オメガ(A)

日本に入っていたオメガは直列6気筒の3Lの高性能版だったが、僕に与ええられたものは4気筒の2L、Eセグメントの大柄なオメガには少し非力かと思われたが、アウトバーンでは200km/hも出る十分な動力性能だった。さすがドイツ車である。

このオメガは「オメガA」といわれるオペルセネターのプラットフォームをベースとしたものだったが、1994年に「オメガB」という新しいプラットフォームにフルモデルチェンジを行った。

早速、社用車を新車に乗り換える。リース車なのでこの辺はフレキシブルだ。ついでにワゴン車に変更した。エンジンは2Lのままである。

オペル オメガ(B)

新しいオメガは素晴らしかった。同じ2Lのエンジンながら出力が20PSほど引き上げられたこともあって、最高速は旧型より10km/h以上高い。空力性能が向上したのは誰の目にも明らかだった。

乗り心地も大きく改善されたし、高速安定性も良い、ワゴンのユーティリティの良さもあってとても快適だった。

仕事の関係で何回か通ったベルギーのブリュッセルまではフランクフルト近郊の家から400kmほどだったが、旧型に比べると所要時間も疲労度も全然違った。遠くは南仏のプロバンス地方までの全行程2,600km超えという旅行に行ったりと大活躍だった。

1995年7月、英国への転勤を命じられる。

わずか2年余りとはいえ、住み慣れたフランクフルトを後にして引っ越した先はロンドン市の北部、ノースフィンチレイという町だった。ロンドンは在住の日本人の数も欧州地域では圧倒的に多く、食材の入手をはじめ、日本人にはとても便利で住みやすい町だったが、静謐さ溢れるドイツの町並みが懐かしかった。

ここで最初に乗ったのはいすゞのビッグホーン、現地名はトゥルーパーだった。
ドイツでも一瞬乗った一つ前の593という車型は前述したように北米向けのピックアップトラックのプラットフォームの流用だったが、英国で乗ったものは960という次世代プラットフォームの本格SUVだった。

いすゞ トゥルーパー

エンジンはV6の3.2Lで強力だった。

この車で毎朝M1という高速道路を50マイルほど走って通勤する。英国の高速道路は速度無制限ではないのでドイツでの通勤に比べると車速はかなり低いのだが、直前まで乗っていたオメガに比べると重心の高いSUVの960は安定性、乗り心地ともに劣っていた。

しかしながら、さすが本格SUV、多少の障害物は苦もなく乗り越える。ある時、地下鉄の駅の駐車場に停めた車を出そうと料金ゲートでお金を払ったが道路の突起(下がらないと通れない)が下がらない。故障らしいが夜であったこともあって誰もいないので途方にくれてしまった。もしやと思い、ゆっくりと慎重に車を進めると簡単に乗り越えてしまった。素晴らしい! とはいえ、あまり好きではないSUVなのでリース契約が終わったところでまたしてもオメガのワゴンに乗り換えた。今度はオペルではなくヴォクソールである。

ヴォグソール オメガ

あたりまえだが期待を裏切らない高性能とユーティリティ、やっぱりオメガワゴンは素晴らしかった。また、ここで知ったステーションワゴン(エステート)の良さが後年の車選びにも大きく影響してくるのだった。

家人はこれまで運転とは縁のない人だったが、日本人学校のスクールバスのバス停までが遠かったのでやむを得ず英国で免許を取得した。彼女の人生最初の車がこれ。

ローバー ミニ

ローバーミニである。

実は会社に入ったころからいつかミニに乗りたいという気持ちがあって「ミニ貯金」なるものをしていた時期もあったが、結婚をして家族を持ち、そして海外に赴任ということもあってまったく縁のない存在となっていた。

好機とばかりにミニの中古を購入。邦貨にして約15万円のミニはボロかった。

ヒーターやデフロスターは全然効かないし、なんといっても右折時にエンジンストールをしそうになる。後で調べてわかったことだがデストリビューターの接点が摩滅して点火プラグから火が飛ばないという症状だったようだ。

しかしながら車高が低く、これ以上ないというぐらいコンパクトなミニの走りは心地よかった。週末にロンドン郊外のB級道路を走ると鼻歌が出そうだった。

家人にとっては初めての車なので、このミニが如何に常識外れにボロいかの判断はつかなかったようだ。しかしながら、右折時のエンジンストールも含め危険を感じることがあったので、ミニは秘書に譲ってヴォグソールのアストラをリースすることとした。

ヴォグソール アストラ

新車のアストラは可もなく不可もないごく普通の車だったが、中古、いや大古のミニに比べると全てが快適で安全だった。
英国での駐在期間の最後は自社工場で作るSUVのヴォグソールフロンテラに短期間乗った。

ヴォグソール フロンテラ

欧州では年間4万台近く売れる人気車だったが、僕としてはオメガのワゴンの方が全ての面で好きだった。