8750円で落札したV15 Type-4(Ⅳ)のカートリッジ。カートリッジ以外には何も付属品は付いてこなかった。そもそも音は出るのだろうかとも思ったがこの値段ならしょうがない、一発勝負に出た。数日後に小さなタッパーに入って到着したType-4。見た目はそこそこ綺麗、期待が膨らむ。
カートリッジ単品ではレコードを鳴らすことができないのでスタイラス(針)、ヘッドシェル、リード線をそろえる必要がある。
スタイラスについてはM44Gの「黒柿」でその高品質を体感したJICO(日本精機宝石工業)にすることに迷いは無いのだが、このJICO、V15 Type-4用だけでも6種類の交換針を用意している。
①VN45HE Sダエンチップ:元気な印象のある音
②VN45HE SAS/B:繊細な音の再現が得意
③VN45HE SAS/S:ハイレゾ系の音に近いような印象
④VN45HE SAS/R:音に響が加わったような印象
⑤VN45 *ジルコニアカンチレバー シバタ針:輪郭のはっきりした精緻な音
⑥VN45 KUROGAKI 黒柿:低音に迫力があり、木製カンチレバーならではの温かみのある音
楕円針、SAS針、シバタ針と針先の形状が選べるだけでなく、カンチレバーの材質もアルミ、ボロン、サファイア、ルビー、黒柿と多彩だ。それぞれの針の後に続く音質の特徴は別件の問い合わせに合わせてJICOの方がメールで送ってくれたコメントだ。素晴らしい!黒柿の良さはM44Gで経験しているのでType-4も⑥の黒柿にしようかとも思ったのだが、まずはベースラインとなる傾向を掴むべく①もしくは②にしようと考えた。③と④はちょっと高価だし。
オリジナルに近い音を求めるなら①なのだが、JICOといえばSAS(Super Analogue Stylus)針が有名だ。
あの微細なダイヤモンドチップに信じられないような精密加工を施した針先なのだが、JICOによれば、「レコードをカッテイングする時に使用されるチップに限りなく近い形状で、音溝とチップとの線接触(接触面積の拡大化)を実現し、高音から低音まで幅広く再現可能なモデルです。また摩擦係数が全モデルの中で最小なため、長寿命を誇っています。」とのことで、通常のスタイラスの2.5倍の500時間もの耐久性も有している。ということで②に落ち着いて発注したらすぐに配達されてきた。
ヘッドシェルについてはM44G Woodyでも使った山本音響工芸のアフリカ黒檀製のものを使うことにした。但し、今回は6N銅リード線付きのものではなく単品で。
価格のこともあるのだがリード線による音の傾向も知っておきたいのと、PCOCC(単結晶状高純度無酸素銅:2013年に製造が終わった。後継の材料としてPC Triple-C材が使われている。)を使ったオーディオテクニカのAT6101を今後標準的なリード線として使っていきたいので、それのお試しという意味も兼ねている。先日のM97xEのヘッドシェル交換の際に、不慣れな作業でリード線(今となっては何だかわからないのだけど高そうなリード線)をダメにしてしまったので、そのリベンジも兼ねてリード線を後付けするヘッドシェルを選んだのだった。それとPCOCC材に対する愛着もある。
揃えたパーツを並べて作業を開始。
最初にカートリッジを仮組みしてテクニクス純正のオーバーハングゲージに取り付けておおまかな前後の位置出しをしておく。
ここで早くも難題発生。ネットでも何回かそういう書き込みを見かけたのだがV15 Type-4の取り付けにくさったらどうしようもないのだ。本当はシルバー系(アルミ)のネジを上から下に通してカートリッジ脇でナット締めとしたかったのだが、カートリッジのハウジングの形状のせいで作業性が極悪、なかなか上手くいかない。最終的にはヘッドシェルに付属してきた真鍮の金メッキネジを倒立させてヘッドシェルを貫通しナットで締めるというあまり格好良くない外観に仕上がってしまった。まあいいか。
ヘッドシェルにおまけで付いてきたか細いリード線(これはこれで良い音なのかもしれないが)を外してAT6101を慎重に付ける。シェル側の端子がちょっとキツいので千枚通しで端子を拡げてやったりしてなんとか無事に完成した。
ハイコンプライアンスのカートリッジに重いシェルが良くないのはM97xEで経験済だったので、気になる重量を測定すると20gとそこそこ軽量に仕上がっていたのでOKだ。リード線の誤配線も心配なので恐る恐るプレーヤーに装着した。直前まで付いていたM44G Woodyとほぼ同じ重量なのでゼロバランスも簡単に取れた。カートリッジ上面(取り付け面)から針先までの上下寸法は18mmなのでアームベースの高さも変える必要が無い。針圧を確認すると1.0~1.5gなので1.25gにセットして、アンチスケーティングの値もそれに合わせる。これでプレーヤー側の調整は完了。ネットで調べるとV15 Type-4の負荷容量は250pFなので(M44Gは450pH)、プリアンプの数値をそれに合わせる。これですべての準備が整った。